2003年12月15日月曜日

手紙 幼くはなくなってしまったあなたに




ハロー、 ハロー、

遠い所から手紙を送ります。
幼くはなくなってしまったあなたに、
わたしの言葉を、なるたけ沿わせながら、
遠い所から手紙を送ります。
聞いてほしい、

ハロー、 ハロー、

聞いてほしいのです。
ひとつの目覚めを歩み出しているあなたに。
いまだ育ちゆく夢の中径(なかみち)の、
枝に懸かる、小さなもみぢを。
その文字を。

枯れゆく季節に。
冷たい夜空に。
月だけが不思議と少し大きく見え、
見上げていたあなたの、
美しい横顔は雪原のようでした。
わたしは伝える声さえ失って、

聞こえますか? 聞こえますか?
いまは一度でいいのです。
あなたの言葉がしゃべりたい。
わたしの背丈のこの歌を、
かつて、あなたが遠くから、
しずかに繰り返してくれたように。もう一度。

ハロー、 ハロー、

遠い所から手紙を送ります。
書き散らしていく幾千の掌は、
枯れることなく、空へとむかう。
そして星になるのです。旅立つあなたを、
照らせるくらいに、輝いて。

 (覚えていますか? あの頃の帰り道。
  夕べはしずかに実りにむかい、
  暮れゆく空で、穂は瑞々しく傾いでいました。
  幼かった子らの舞いゆくのが見え、
  代わり代わりゆくものはすべて貴(とうと)かった。
  きっと今でもそうなのです。)

 四人でした。
 四人でした。
 ありがとう。
 ありがとう。

ハロー、 ハロー、

いまだ育ちゆく夢の中径で、
小さなもみぢは、枝をはなさない。
ずっと、聞いていて下さい。わたしの、
わたしたちの歌を。歌いつづけるから。

あなたから遠く、しかし一緒に歩みつづけながら、
わたしは手紙を送りつづけます。
空へ、



   作者註)この詩は、女性の音楽グループZONEから、
   リーダーのTAKAYOが「旅立つ」ことを発表したこ
   とに端を発して、書かれたものである。ZONEは、結
   成からその時まで、ずっと変わらぬ四人のメンバーで活
   動していて、その中で年長者でもあったTAKAYOは、
   六年にわたり、リーダーとして若いメンバーを引っ張っ
   てきたのだった。
    この詩を書くにあたり、ZONEの「僕の手紙」を主
   に参考にした。



          (二〇〇三年十二月十二、十三、十四日)