(AV女優 大空あすかさんに) 「それが全部表現だと思ってます」 一行の、 沈黙。 夜が孕む、 白い、一本の裂け目のように、 彼女の体内で、 声が、 か細く立っている。 ゆるぎない、 それは誰にも犯すことができない、 一瞬。 または永遠。 二〇〇三年三月二十七日発売、 成人向け雑誌 ビデオボーイの、活字の海で、 渦を巻く淫語の中、 その一行は、 立っている。 沈黙として。 表現する彼女の、 表現されえない、夜の子宮として。 今も、 全国のコンビニに並ぶ、 この雑誌を前に、射精するものよ。 あるいは彼女のビデオを借りてきて、 再生し、巻き戻し、時には一時停止して、 自らの肉棒を、ひとり慰めるものたちよ。僕らは、 僕らの肉棒は、 彼女の子宮口に届くだけの、長さを、 そしてゆたかな孤独を、 その沈黙の中に、 持ちえているか。 ビデオの中で、 大空あすかは今日も性器を挿入され、 絶叫する。 僕らは欲情する。 「それが全部表現だと思ってます」 小詩集『鳥、その不在、/三月』より |