正しくない朝などあっただろうか。 世界の学生食堂に、 しずかな喪服が満ちていく夜明け。 白々しい沈黙と、 小さく鳴り続けている食器の音を、 ひかりと呼んで、 わたしは旅立たない。 正しくない朝などあっただろうか。 夜が眠らす鉄と羽とを、 さらに深くまで眠らせていく行為。 森のつぶやきの中で、 それは常に成功し、かつ失敗するから、 わたしは目覚めている。 返り血は既に乾いた。 誰も見えない道の上、 空腹は絶望ではなく佇んでいる。 どこかで風が冷えていき、 満ちる海さえないままに、 朝が昼になる。 音がとぎれず忘れられていく。 裸足で踏んでいく真実のやらかさ。 やがて家に着くまでの、 引き伸ばされた、角(かど)。 正しくない朝などあっただろうか。 歴史はしずかに微分され、 あらゆる若さがマナーの席に着く。 正しくない朝などあっただろうか。 射抜かれた鳥たちの骨と肉は消えた。 駆けるもののない空を、 鉄の昏睡と、 わたしの呼吸だけが明けさせていく。 ここでは誰も生きていない。 ここでは誰も死んでいない。 昨日殺したのが一体何なのか、 それさえも思い出さないまま、 無表情なざわめきの中、 ひかりは果てる。 この朝に、 向かう先はない。 |
2004年4月14日水曜日
ありふれた朝
2004年4月4日日曜日
町田
行き先を決めてしまわないと、 降りることさえできない、 巨大な歩道橋。 JR町田駅東出口直通の、 空中交差点を、 午後もまた、たくさんの人々が、 すれ違っていく。 楽しそうに。 遠くまで伸びる視界。 道は百貨店にもつながり、 小田急の駅にもつながっている。 高く、なめらかに整列したビル群と、 均しく瞬かれている、 空。 その手前、歩道橋上で立ち止まり、 ひととき談笑する若者たちの上、 あるいは彼らの横を、 白く通りすぎる娘と母の上に、 穏やかな温度が、 崩れ落ちてきて、降る。 町田。 通り過ぎていく人々の、 うつくしい歩行を誰も呼び止められない。 町田。 まつわりつくはかなさを、 スカートの裾が淡々と払う。 卵のように寡黙なひかり、 町田。 なじまない眼差しが、 影よりも伸びる。 宇多田ヒカルが聞こえている。 町田。 はかなさを払いつづけてはかない。 日の名残さえも冷めていき、 カン。 カン。 カン。 と、 それぞれの水平線のむこう、 暮れる。 誰のものでもない日没 町田。 あてもなく巡るうちに夜は来て、 一枚の地図を覗き込む、 少女と中年男性の姿を見た。 |
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