2003年10月27日月曜日

殉教

世界よわたしをわすれなさい。
海までつづく踏み切りが、
一斉に鳴り始める朝に。

世界よわたしをわすれなさい。
叶わなかった鳥たちが、
木の蔭でうそぶきだす前に。

すべての悪臭はわたしから発する。
すべての毛と肉はわたしによって汚れる。
割り箸が割れる。世界中で。
思春期の魚が串刺しになる。

わたしの手と歯を洗い流すのだ。
うごめく網の目の間から。
その時、水面(みなも)は空(そら)になるだろう。
線路沿いのコンビニに、朝が来るだろう。

2003年10月2日木曜日

モルヒネ

モルヒネ


苦しまずに、死ぬことができる。
といっても。


生きている僕らには。
死ぬ苦しみなど、わかるはずもなく。


たくさんの死が。
閉じ込められる部屋の中。


白い、白い医者が。
点滴の入れ換えを、指図している。



既に動かなくなった祖父。
打ち込まれるモルヒネは、遅すぎて。


長かった苦悶を終え。
最後の踏ん張りを見せようとする者の。


足をすくう。



悔しそうな死に顔に。
苦しみは、ないか。


 (一粒の涙。)