2003年12月5日金曜日

風と骨格


鳥の骨格について考えている。
午後、海のむこうから、
誰かの声が聞こえてくる。

鳥の骨格について考えている。
家を出て、見上げた青空で、
白い雲は流れていかない。
僕は石畳の道を下りていく。

風の午後、誰もいない町からは、
時折、囁き声がもれてくるばかりで、

道沿いの樹々は、人知れず咲いた小さな花を、
音もなく、陽の光の中に散らしている。

海からの風。僕が思い描く青空で、
鳥の骨格は、しずかに翼を広げてゆく。

けれど飛べない。しずかに翼を開いたままで、
吹きつける風を、ただ後ろへとすりぬけさせるだけ。

いのちを守るための、骨だったのだ。
そして空を飛ぶための、骨だったのだ。

鳥の骨格について考えている。
午後、海のむこうから、
誰かの声が聞こえてくる。

鳥の骨格について考えている。
主に、そのかるさについて考えている。
鋭い音を立てて、
青空を戦闘機が通り過ぎていき、

壊された町並みの中、
僕は石畳の道を下りていく。



   小詩集『鳥、その不在、/三月』より