鳥の骨格について考えている。 午後、海のむこうから、 誰かの声が聞こえてくる。 鳥の骨格について考えている。 家を出て、見上げた青空で、 白い雲は流れていかない。 僕は石畳の道を下りていく。 風の午後、誰もいない町からは、 時折、囁き声がもれてくるばかりで、 道沿いの樹々は、人知れず咲いた小さな花を、 音もなく、陽の光の中に散らしている。 海からの風。僕が思い描く青空で、 鳥の骨格は、しずかに翼を広げてゆく。 けれど飛べない。しずかに翼を開いたままで、 吹きつける風を、ただ後ろへとすりぬけさせるだけ。 いのちを守るための、骨だったのだ。 そして空を飛ぶための、骨だったのだ。 鳥の骨格について考えている。 午後、海のむこうから、 誰かの声が聞こえてくる。 鳥の骨格について考えている。 主に、そのかるさについて考えている。 鋭い音を立てて、 青空を戦闘機が通り過ぎていき、 壊された町並みの中、 僕は石畳の道を下りていく。 小詩集『鳥、その不在、/三月』より |