無題 (『千と千尋の神隠し』へのオマージュ 6) 見えない。 見えない。 ふり返ることのできない、 草深き道を、行く途中。 干上がった小川を飛びこえて、 残された石のまるさに、 しずかに呼吸をとめる 十歳の少女。 しかしふり返ることはできず、 立ち止まることさえできず、 すぐにまた、あるきだす。 いきをしながら。 目に映る景色を、 次々、後ろに追いやりながら。 見えない。 見えない。 (未完) 無題 (『千と千尋の神隠し』へのオマージュ 6 『害虫』へのオマージュ 1) 見えない。 見えない。 振り返ることのできない、 草深き道を、行く途中。 干上がった小川を飛びこえて、 残された石のまるさに、 しずかに呼吸をとめる 十三歳の少女。 しかし、振り返ることはできず、 立ち止まることさえできず、 すぐにまた、 あるきだす。 いきをしながら。 目に映る景色を、 次々、後ろに追いやりながら。 見えない。 やっぱ見えない。 駆け抜けていく少女の頭上で、 空の青さが、 白くかすれていく。 かすかに磁気を帯びた、 花びらが、流れているせいだ。 (未完) 無題 (『害虫』へのオマージュ 1) 空の青さは、 白く、かすれ始めていた。 かすかに磁気を帯びた花びらが、 風に乗って、何枚も流れていくせいだ。 切り裂いていく、 鉄の花びら。 前髪をゆらしつづけている、 なまあたたかな、風。 草深い、九月の川の堤から、 少女は立ち上がる。 夕暮れ。 制服のスカートからのびた、 少女の、十三歳の、まっ白な二本の足は、 すでに、光にさらされていた。 たくさんの切り傷を負いながら、 その足は、白く、立っていた。 そして、靴と靴下だけを履いた、その足は、 家にむかって、また歩き出す。 軽やかな足音を立てて、 少女の帰り道は、 日に日に家から遠ざかっていった。 帰り道 (『害虫』へのオマージュ 1) 空の青さは、 白く、かすれ始めていた。 かすかに磁気を帯びた花びらが、 風に乗って、何枚も流れていくせいだ。 川原に舞い降りてくる夕暮れは、 どこか、鉄のにおいがした。 わたしの前髪をゆらして、 なまあたたかい風が、 遠くから、吹きつづけていた。 むこう岸の空で、 鳥が、 手紙のように千切れていく。 白く。 白く、横切っていく。 (「宛テ名ノ、モジガ、 マチガッテイルヨウデス。」) 青空の底のほうに、 屋根の低い家々が見える。 この叢で、 わたしは、十四歳になろうとしていた。 ひとりで鼻歌を歌いながら。 制服のスカートから、 切り傷だらけの二本の足を、さらけ出しながら。 のろしのように、 錆びたドラム缶を叩く音が聞こえる。 沈んでいく夕日に合わせて、 わたしの帰り道が、 キリキリと、その角度を変えていった。 |