(ふゆさんの「ここからはいつもうみがみえる」に) 「海はあちらです」 「海はあちらです」 「海はあちらです」 そう三回つぶやいて すべてがうそになっていく 大きなつむじ風に巻き込まれた人たちが 今日 しずかな陽になってテレビの上で 寝返りを打つ 何も燃え上がらない こんな朝には 抜けた前歯を 屋根の上に投げ上げて その屋根が 他人の家の屋根であることに もう なんの笑いもこぼれない そんな喜び シニカルなシニカルな 弟たち 先生たち の あおぞら どんな歯が 生えるだろう すべての道しるべは屈折し 矢印は 世界の人の数だけの 方角をさし 動きを止める 「海はあちらです」 「海はあちらです」 「海はあちらです」 そんなこと わかっているさ ここからはいつも海が見えるんだ 白い砂浜で いつまでも矢印は砕け散り 散り続け ほら 菫色の妹たちの遠足は 声もなく 突堤を踏み切る 二〇〇四年一月二十三日 注)この詩の第四、五、六連には、入沢康夫さんの詩「遐い宴楽」からの引用と替え歌が混じっています。 |