2004年12月14日火曜日

返詩 即興


   (ふゆさんの「ここからはいつもうみがみえる」に)


「海はあちらです」
「海はあちらです」
「海はあちらです」

そう三回つぶやいて
すべてがうそになっていく

大きなつむじ風に巻き込まれた人たちが
今日 しずかな陽になってテレビの上で
寝返りを打つ

何も燃え上がらない こんな朝には
抜けた前歯を 屋根の上に投げ上げて

その屋根が 他人の家の屋根であることに
もう なんの笑いもこぼれない

そんな喜び
シニカルなシニカルな
弟たち 先生たち
の あおぞら

どんな歯が 生えるだろう


すべての道しるべは屈折し
矢印は 世界の人の数だけの
方角をさし 動きを止める

「海はあちらです」
「海はあちらです」
「海はあちらです」

そんなこと わかっているさ
ここからはいつも海が見えるんだ
白い砂浜で いつまでも矢印は砕け散り
散り続け

ほら 菫色の妹たちの遠足は
声もなく 突堤を踏み切る



     二〇〇四年一月二十三日


注)この詩の第四、五、六連には、入沢康夫さんの詩「遐い宴楽」からの引用と替え歌が混じっています。