三角形だった。三本の黒い棒で出来ていた。未確認鉱物の類かと思って突っついてみると、雪だるまに使う備長炭だった。鳥取の砂浜まで来て暇なやつがいるもんだ。ちなみにここは砂丘ではない。しかも七月だ。中学生の哲夫がそう思ったかどうかは定かではない。火星人は今日もやってこない。はるか沖合いで、不自然な誰かがしきりに手を振っているが、哲夫も豊次郎も、宮崎あおいですら気がつかない。ボーボボは少し前に焼死している。残り火を村上春樹がかき立ててそ知らぬ顔だ。彼の鼻毛は死んでも伸びつづけている。 その時だった(いつだ)。三角形は右側の頂点を軸にゆっくりと一辺を動かし、口を開けた。絵の中の沈没する船から脱出するフナムシのように、噂話のロス・エンジェルスから出血する砂金のように、あるいはこの間の台風で松山で起きた土砂崩れのように、砂が少しそこから流れ出て、止まった。いま、何人死んだ。空は今日も砕かれた鉄のように青い。 |