あなたの笑顔 あなたの笑顔に 場所があるならば わたしにください 傷だらけの腕で 癒し系なんて呼ばれて 消費されていくあなたの一瞬 の やわらかい経血 穏やかな穏やかな中音で また 笑う その笑顔の場所を ください行き過ぎず 切り拓いていく足になるから 部屋ではなく 無煙の海 わたしのさまよう原野のむこう 夏のひと日がくず折れていく 波のように ベースのように あなたはそこで弾(はじ)かれて また 笑う 痛む腕の 跡形もなく 違うところへ もうほほえんでいる 遅れる。 遅れてきた子が、 一人、棒になって傾いでいく海辺で、 僕らは何度も、 何度も波をくぐり抜けよう。 夕焼け色に染まった、 髪の短い、あなたの頭が、 うなづくみたいに、 しずかに沈む時 絶望なんていらない。 名前も知らない棒きれを起こして、 やさしくかついで、 さあ、一緒に帰ろう。 覚えられない家までの道を、 二人と一人で、 どこまでも遅れながら。 次のしぶきまで。 ZONEの「太陽のKiss」へのオマージュ かづく朝に また飛び込んで 青 夏のど真ん中 やどかりが かりそめの境界線の上 石舟のように 這う と 二人で作った砂の城が (しかし、誰と誰とが?) そこで何度も生まれ直しては また 濡れる 足跡ばかり駆けていく 掴める夏 太陽のKiss ザクロみたいな夕空が降るまで 新生 脱ぎ捨てた空 懐かしい傷さえ残さずに 肌はさらにやわらかく おどる まわっている風が 幾重にも剥がれていく そのあい間に宿された ひと夏 わたしたちは笑っている 青くゆれているハンモックから 起き上がってダッシュする 海辺の砂の上 焼けた骨よりもまぶしい 真っさらな白い板を抱く 刻まれた名前は見えない 亡くした人さえいなくなるひと夏 (2004年5月18日~6月25日) |