古い伝説が横断してゆく 坂道の下 晴れてしまった交差点を 古い伝説が横断してゆく 白い背中と かじりかけた林檎の 青 一斉に鳴り始めた着うたは とまらない いつまでも変わらないまま 誰もいない校庭のまん中に 重ねられてゆく 遠い朝焼けのように 尊かった教えは 雲のように直進し どこかで 果てていた 傷のない耳と 幼い背中を見つめる僕の それは 欠けてしまった 罪 「さあ むすめよ」 こんなありふれた街角で 僕はあの子に 声をかけたいのだ 「さあ むすめよ わたしたちの会えない母親に 会いに行こう いますぐ ここから ひかりの射し込む あのバスに乗って」 と 〝わたしたち〟の乗ったバスは やがて 躊躇うこともなく 坂道の下で 〝彼〟 をはねるだろう (二〇〇三年八月二十日、九月一、二、三日) (小詩集『試論』より) |