2004年3月28日日曜日

「ここから」のためのラフ


(ここから)

痛んでいく、        いつも

(ここから)

歌い始めていく、      いつも

(ここから)

出会う、          いつも

(ここから)

だから別れる、       いつも

(ここから)



すれ違う皮膚と皮膚の感触から、伝わる信頼というのがあるのでしょうか。あなたの呼吸。信じることの温度と風。聴こえない水音を、それでも聞こうとして。黙りこくる私の肩に手を置いてくれるのは、それもいつも、あなたでした。

掌のむこう、言葉もなく育っていくあなたの痛み。葉も花も落としてボキボキに折れて乾いて水も吸い上げたくなかった茎であったあなたがそれでも生きて生きて今あって育ち育っていく日々の中で吸い上げていく水の音にわたしはわたしたちは声を合わせて、

うたっていた
うたっていたのです。

大人になれないあなたのほほえみが遠いあの場所を見つめているのをわたしはわたしたちは知っていました。ふくらんでいかない青空の速度でそこにとどまっているあなたのおだやかさにわたしはわたしたちは気付いていました。流れる雲のように。そこにおおうための顔なんてなかった。くじけるための仰々しい羽さえもなかった。あれはあなたの歌なのです。間違いなく。大好きだから。わたしたちも歌ったけど。でもやっぱりあなたの歌なのです。だからこんなにも泣けてわたしはわたしたちは今日も、

あの歌を歌えない。
流れる時間だけを夕闇の中で会話する。


「まっすぐな目で、生きてきた」


歩き方ぐらい、わたしたちみんな、身体で覚えていましたね。説明なんかされなくても、わたしたちはみんな、一人で歩いていけたはず。けれど、いつしかそばを歩いていたいくつもの足音に、わたしたちは、わたしは、歩んで来た道を知ることになったのです。枯れた茎の中、それでも水を通すように歩いた。痛みに怒り、それさえも新たな歌にかえ、血まみれだからといって足が止まることはない、歩き方ぐらい身体で覚えている。それでもただ、ただ肩に置かれる掌と、すれ違ったときのあなたのまなざしとが、なかったなら。

仮定する言葉の先で果てもなく落ちていくもの。その速度。どこまで行ってもこの足の甲と交わることのない。そして歩きつづけるわたしたちの道は、あの歌のある、一つの海岸へとつながっているのです。


「まっすぐな目で、生きてきた」

「まっすぐな目で、生きてきた」


ねえ。信じるって、何ですか。かつて、あなたがわたしに見せてくれた、あの、傷だらけのふくらはぎの、白い、まぶしい沈黙のことですか。
あなたは今、ここにはいないけど。

遠い島の金色の秋。まばゆい野原に小さな窓を開ける、あなたの両手の中で。ほら、私は今日も、こんなに大きな青空を見上げている。窓枠なんてない空。
今度はあなたに、わたしから、歌いたい歌があるのです。わたしの水音で。



(ここから)

育っていきます、         いつも

(ここから)

歌の最後をおさめます、      いつも

(ここから)

しずかに満ちていく、海      いつも

(ここから)

出会う              いつも

(ここから)