わたげ ――ある死者のために うたうやうに しずかなはなを さかすやうに は ね それは 草や木の いのりでありました そらとみずの そらへ ゆたかに うつくしく 実 の、り ふくらんでいく は ね うたうやうに しずかなはなを ふむ やうに このあしで いのちのおはりを ふみ ふみ ふみしめてあゆんでゆく あかんぼう の あし の やはらかさ ふみ 大事なふみを なくしてしまつた このゆびは かはにもぢをかくには かたすぎる やがて かれてしまつ た この手のひらに まぼろしのやうに 白く あめのやうに こまかく ふつてくる は ね かすかに音をつれて 実 の、り それは 草や木の いのりでありました うたうやうに しずかなはなを からすやうに (二〇〇二年十一月一日 桃井望の死後第一作) ZONEの「白い花」へのオマージュ つないだ手の、 あのぬくもりの、 名前 なくしたから、 思い出さえ、 もう思い出すことはできない。 雪降る夜の、 深い底の、 道 闇のむこうへ、 あなたの名を呼ぶこともできないまま、 わたしはひとり、 あるいている。 しんしんと、 雪が言葉を遮っていく。 世紀を越えて、 ここでは沈黙が降りつづいているから、 わたしのこの手は、 すでにかじかんでしまった。 正しい思い出を、 正しくさがすこともできないゆび。けれど、 降りしきる雪のむこう、 いまでもかすかに、つながっているのだ。 名を呼ぶこともできない、 あなた そのぬくもりへと。 そして、わたしはひとり、 わたしたちはひとり、 あるいていく。 底のない夜空のかなた、 殺されたはずのわたしたちの季節が、 白く、浮かびあがっている。 それは、 まぼろしのようにおおきな、 白い花 いつの日か、またこの胸の中で、 咲いている。 (二〇〇二年十二月十九、二十二日) (二編とも、『寄せる波、世界へ、』より) |