2006年1月15日日曜日

詩集 『寄せる波、世界へ、』 前半


   わたげ ――ある死者のために



うたうやうに
しずかなは(ふぁ)なを
さかすやうに

は(ふぁ)     ね

それは
草や木の
いのりでありました

そらとみずの
そらへ
ゆたかに
うつくしく
実   の、り
ふくらんでいく
は(ふぁ)     ね

うたうやうに
しずかなは(ふぁ)なを
ふむ
やうに
このあしで
いのちのおはりを
ふみ

ふみしめてあゆんでゆく
あかんぼう

あし の
やはらかさ


大事な文を
なくしてしまつた
このゆびは
かはにもぢをかくには
かたすぎる

やがて
かれてしまつ た
この手のひらに
まぼろしのやうに
白く
あめのやうに
こまかく ふつてくる

{ルビは=<ふぁ}     ね
かすかに音をつれて
実   の、り

それは
草や木の
いのりでありました

うたうやうに
しずかなは(ふぁ)なを
からすやうに





   京都、また新年。

 (京都のイベント『Portry Lunch Box』のために)



bent

bent

曲げる  まがる  かがむ
(の、過去分詞)

bent

曲げる、まがる、かがむ、
(の、過去分詞。)


また新年。
京都の街を、
吹き抜けていく風。
( feng )
いつかの雪は、
アスファルトの下、
鴨川の底、
そして、
すれ違った女子高生が覗き込んでいた、
ケータイのディスプレイの裏側にも、
ふり
ふりつもる。

また新年。
さっきの風は、
交差点をまがっていった。
( fe
どこまでいっても、
bent
過去分詞
の、この街で、
餅が、
そして餅が、
また餅がさらに餅がそのうえ餅がまだ餅がそれでもなお餅が
焼かれ、
食われていく。
一斉に、
京都


bent

曲げる  まがる  かがむ
(の、過去分詞)

bent

曲げる、まがる、かがむ、
(の、過去分詞。)
この街で、

弁当

空っぽの四角いはこ に
つめられた昨日の残りもの。

弁当

こんなにも区切られ、こんなにも曲げられたこの街で、
つめられた昨日の残りもの。
(の、過去分詞

そこで僕はかがんでいる。





   〝水へと、〟

 (雨の中行われていた芸術イベント『大風流』に)


   1、

ぼくはいつでも、かげをもっていた。
あしもとから、ほのぐらいひかりがあたるから。
でもぼくは、そのひかりがどこからくるかしらない。
ぼくはここでたっている。

「 オブジェ。…… 」

あめにぬれるから、
ぼくのまわりに、よごれたあしあとが、
残っていた。


   2、

水の、

水の、

あるく。 ぼくは、

撤去されてしまった、自転車を取り返しに、

遠くまで、あめの、はいいろの雲を、

しらない、大通りはもうすでに、

の、

さらに遠くまで、

歩いていった。 ぼくは、

水の、

かたち?

に、さわっている

〝水へと、〟

帰っていった。

それは、

撤去されてしまった、自転車を取り返しに、

水の、

水の途中。


   3、

あめにぬれるから、
ぼくの絵の具が、たれてきた

よ。





   黒い風

 (河村隆一ミニアルバム『人間失格』へのオマージュ)


どこかで
見つけた
黒い風

人間失格の
穢れたからだ

甘い歌声
あんなに優しい
MeLoDy を

うた、
うた、って
(そこへと)
逃れていく
一ツのからだ

許されて
誰かに許されて
いる
彼(その男)は
(あなたへと)
愛を歌って
いる


 「道化師を演じる僕を受け入れて下さい
 「この僕を睨み 叱って下さい
 「僕を


やがて
偽ものの草原の果て
家と道とが
燃え上がる

うしなって それでも
彼(その男)は
ひとりで歩いていく
遠い火傷を負いながら
偽ものの草原のうえ
(あなたへと)
あこがれ あゆむ
人間失格の
穢れたからだ


甘い歌声
あんなに優しい
MeLoDy は

彼(その男 あるいは私)

どこかで
見つけた
黒い風


 「僕はあなたを愛している
 「僕はあなたを愛している
 「僕は